「ユーザの要望を聞いてソフトウェア開発をしたかった」 – Kinza開発者インタビュー
こんにちは、Kinza開発チームです。
今日の更新はKinza開発者へのインタビューをお送りします。プロダクトを造る側であるエンジニアの考えていることや理想を是非知ってもらいたくインタビュー形式で記事化しました。
聞き手及び質問は、ブロガーのMOONGIFTさんに引き受けて頂きました。長文ですが、良ければご一読ください。
Kinzaの開発のきっかけについて教えてください
端的に言えばユーザの声を聞いてブラウザを作りたかった、それに尽きます。Kinzaは約1年前にリリースしたのですが、その当時でも様々なブラウザが存在していました。例えばSleipnirやLunascapeなどです。しかしそれらのブラウザがユーザの声を反映して開発しているとは思えなかったのです。
昔のソフトウェア開発においてはユーザの声を聞いて開発していくというのはごく当たり前のように行われてきました。しかしインターネットユーザが増えていく中で、徐々にそういった仕組みがなくなっていったように思います。私たちが考えるのはまさにあの世界です。ユーザの要望をソフトウェア開発に活かしていく世界を実現したいと考えています。
なぜWebブラウザを選択したのですか?
Webブラウザはインターネットを利用する際の基本です。そのため拡張性という意味で様々な点に手が入れられます。そしてそのベースになりえるChromiumという存在があったのが大きかったと思います。Chromiumを選んだ理由としては、既にIEコンポーネントやGeckoエンジンもあったのですが、IEコンポーネントは触れる部分が限られるため難しく、Chromiumは後発のエンジンであるがゆえに過去のブラウザの問題になった部分をうまく解決しています。例えばマルチスレッド対応やタブごとのプロセスの切り分けなどです。
Chromiumは素晴らしく、Google Chromeのようなブラウザもありますが、なかなか日本語圏のユーザが意見を言って取り入れてもらうのは難しいと思います。そこでKinzaはChromiumをベースにしつつ、そこにユーザの要望を反映していく形で自分たちに合ったWebブラウザを開発していきたいと考えています。
日本では特にIEのシェアが大きいと言われています。つまりコンピュータを買ってきたそのままWebブラウザを使い続けている人たちが多いのです。そして慣れた人たちがGoogle ChromeやFirefoxなどを使っています。私たちはもっとWebブラウザの魅力を伝えて、Kinzaを選択して欲しいと思っています。
今、IEをやめて他のブラウザを探す人というのは上級者に限られています。私たちとしては初級者から上級者まで幅広い層にアプローチしていきたいと思っています。
実際の開発においてユーザの声はどれくらい活かされているのですか?
今実装されている機能は、ほとんどユーザの声からはじまっています。例えばマウスジェスチャー、スーパードラッグはユーザの強い声から実装したものです。ただしユーザはそれぞれ同じ機能であってもイメージが異なるものです。一口にマウスジェスチャーと言っても様々にあります。なのでそうしたユーザの声を聞きつつ、Kinzaにとってのベストな形にして実装していくのが私たちの仕事です。
基本的には月1回程度のスパンで新バージョンをリリースしています。そしてリリースが終わった時に、それまで寄せられている要望の中で意見の多いものから順番に実装していきます。昔はChromiumのコードを熟知していた訳ではなかったので要望を聞いても本当に実装できるのか分からない時もあったのですが、最近では把握できてきたので実現可能性が見えるようになっています。
ちなみに実装されやすい要望としては「私が必要!」よりも「他の人も必要なはず!」といった感じで出してくれる方が良いようです。そうすると他の人もその通り、と要望に乗っかってくれるので上位の要望に上がってきやすくなります。
ユーザの要望はすべて掲示板上でオープンに公開しています。それがコミュニティにもなっていて、他のブラウザよりも活発化につながっていると思います。また、ユーザ志向でWebブラウザを開発したい!と前面に打ち出していることで要望が集まりやすくなっていると思っています。
Kinzaユーザも増えてきたことで最初に比べて要望の幅が広がっているように見えます。Kinzaが私たちの予想を超えて、もっと良いWebブラウザになっていく可能性が出てきたと感じています。
他のChromium派生ブラウザとの違いはなんでしょうか?
機能面においてはRSSリーダーやマウスジェスチャー、スーパードラッグのような違いがありますが、そういった機能面以外での違いが実際には大きいと考えています。例えばCoolNovoというChromium派生ブラウザがあったのですが、今は開発が停止しています。同じようにChromium派生ブラウザで開発停止しているものはたくさんあります。Chromiumの開発はとても速いので、それを追従していくだけでも大変なのです。既存のAPIの名前が変わったり、動作が変わることもあります。そのためあまり奥深くまで手を入れてしまうと、APIが変わった時に動作を保証するのが困難になります。そういったところでChromium派生ブラウザには機能と今後の互換性とにおいてバランス感覚が求められます。
Kinzaについては今のところ月1回のバージョンアップですが、その時のChromium最新版に合わせています。機能追加ももちろんですが、そういったバージョンアップがちゃんと行えていないとセキュリティリスクが高くなっていくのです。後、海外でも掲示板を用意しているところはありますが、開発者が答えているところは殆どありません。Kinzaの場合は寄せられた要望に対して開発者が直接答えるようにしています。
Kinzaの由来について教えてください
Kinzaは日本橋にある金座通りに基づいてネーミングしています。日本橋生まれ、という点を大事にしています。キャラクターのキリンについては実は2種類います。一つはサイトの左上にもいるキリンで、これは漢字の「麒麟」です。日本橋にある麒麟をモチーフにしています。そしてサイトの中央にいるキリンはアフリカのキリンをモチーフにしています。
詳しくは 「Kinzaとは」 を参照してください。
ではエターナル青春系というのは何でしょう?
一説によると「ユーザの要望を聞いて、熱く走り続ける…まさに青春ですね!」というのがあったりと、諸説ありますが…実際のところは秘密です。皆さんのご想像にお任せします。
他のプラットフォームサポートの予定はありますか?
Chromium自体はマルチプラットフォームに対応していますが、今のKinzaはWindowsのみとなっています。他のプラットフォームについては、サポートや開発リソースの問題があってできていない段階です。もちろん将来的には考えていますが、まずはWindows版についてしっかりと作っていきたいと考えています。
Kinzaはまだまだ開発フェーズであり、要望も日々どんどんあがってきています。それらにちゃんと向き合って一つ一つ実現していく段階なのかなと思っています。
Kinza利用中のユーザに一言どうぞ!
掲示板の要望は一つ一つちゃんと見ています。また、Kinzaユーザーが集まっているコミュニティも日々チェックしています。ぜひ今後もKinzaを使っていただき、欲しい機能を書いてください!
聞き手:MOONGIFT